2012年以来、ハンガーゼロはFHフィリピンと協力し、豊かな天然資源に恵まれながらも貧困と災害に苦しむ農村地区、マトノグとスラの人々と共に歩んできました。
マトノグの住民4,793人(1,175世帯)のほとんどは、農業、大工仕事、あるいは小規模な地域産業で生計を立てています。一方、1,500人(415世帯)が暮らす沿岸部の村スラは、洪水や高潮が頻繁に発生する非常に災害リスクの高い地域です。スラの家族は漁業、エビの養殖、季節的な観光業で収入を得ていますが、いずれも不安定で持続可能な生計手段に乏しい状況でした。このような環境下で、子どもたちは危険に晒され、親たちは無力感を抱き、長期的な状況改善への希望は遠いものに思われました。
この12年間、FHは子どもと家族に焦点を当てた支援を実施し、地域住民の能力向上に貢献してきました。学校施設を改善して安全な学習環境を整備し、親と若者への研修を通じてスキルアップを促しました。また、家族がより効率的に資源を管理できるよう貯蓄グループを導入しました。さらに、保健、栄養、そして防災への備えに関する取り組みは、より安全で情報に基づいた地域社会を育むことに繋がりました。その結果、今日、マトノグとスラの人々は、力強く、自信に満ち、希望を持って立ち上がっています。
活動の成果:子どもたちの学び
コロナ禍で多くの生徒、特に低学年の子どもたちの読解力と基本的な計算能力が低下しました。FHは2022年に学習支援者、教師、保護者の協力のもと、助けが必要な60人の生徒たちの支援を行いました。ほとんどの子どもたちの読解力が改善され、学習に対する自信を取り戻すことができました。
心の成長と地域の活性化 FHスタッフは10年以上にわたり地域の教会と協力し、子どもたちと家族の心の成長、人格形成、困難に打ち勝つ力、そして生活技能を育んできました。家族を定期的に訪問して祈り、励まし、希望を与え続けました。その結果、、活発なボランティア活動が推進され、他の地域にも広がっています。マトノグの教会には毎月200人以上の子ども、若者、そして大人たちが集まるようになりました。
その中で子どもや若者たちは、さまざまな活動を通して多くのことを学んで、自分の意見を表明し健全な友情を築けるようになりました。お金の管理や自分自身を守る力が備わり、将来に希望が持てるようになりました。自分の価値を見出し、学ぶことの意義を認識できた結果、多くの若者がリーダーとして育ち、活躍しています。
マトノグに住むジャルダン一家は、父親はバイクタクシーの運転手で、母親はヤギの飼育プロジェクトに参加しています。FHの活動を通して両親は希望を抱くようになり、家族や子どもの教育についての考え方が変わりました。大学に通っている元支援チャイルドは、アルバイトをしながら学びを続けています。
若者の職業訓練と就職支援 2024年には、スラで学校に通っていない10人の若者が、FHの支援と地元政府からの補助金によって電気設備と工作機械のメンテナンス技術を習得し、8人が国家資格を取得しました。
貯蓄がもたらす変化
2016年から貯蓄グループ活動が導入され、600人以上のメンバーが貯蓄を始めました。これらの貯蓄は、子どもたちの教育費、家計の修繕費、そして中小企業の運転資金として活用され人々を助けています。
子ども向けの貯蓄グループ活動も始まり、子どもたちは両親に助けられながら財務管理やグループでの協力を学び、将来に役立つ貴重な技能を習得しています。
貯蓄グループのメンバーは口コミで増えていき、お金を貯める目的だけでなく、メンバー同士のつながりができました。また女性の能力開発にも大きく貢献しています。
新しい生計手段の確立
マトノグの7家族はヤギを受け取り、研修を受けてヤギの管理方法を習得し、持続可能なビジネスへと発展させました。自宅でヤギの飼育を長年続けているリベラさんの家族は、次のように話します。
「ヤギ飼育の活動に参加できて本当に感謝しています。ヤギの管理を学び、友人もでき、共同のヤギの飼育を通じて副収入を得ました。今では、子どもたちに教育を受けさせ小さな事業を始めることができています。家も改築しています。」
地域を支える協働の力
この12年にわたる活動は、FHと共に献身的に歩んできた地域のボランティア、教会職員、学校のスタッフ、地区リーダー、そして地方自治体の職員の方々の働きによって支えられてきました。地域の人々が、抱いてきたビジョンに向かって努力を続けてきたこと、そして何よりも活動を支えてくださった日本の皆様なしには、今日私たちが目にしている成果はなし得ませんでした。
真の変革は、決して一夜にして起こるものではなく、1人の力で成し遂げられるものでもありません。だからこそ、ハンガーゼロとFHフィリピンは、支援者の皆様が支えてくださった子どもたちとその家族と共に歩み続け、見守り、励まし、寄り添い続けてきました。
皆様の温かいご愛と尊い支援を心から感謝いたします。
(チャイルドサポーター事務局)
5月末でマトノグとスラのチャイルドサポーターによる子ども支援が終了しました。これまで長期にわたり子どもたちを応援してくださったチャイルドサポーターの皆さまに、スタッフ一同心より感謝申し上げます。6月9日に行われた終了式典については、後日ニュースレターで報告させていただきます。ハンガーゼロは今後、プロジェクト支援の形でFHフィリピンとの協力を継続していきます。
子どもたちを支える方法は2つ
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